PROJECT


大学院生による研究テーマ

博士学生

自伝的記憶想起時の感情が概活化に及ぼす影響 ZHANG QI

Williams(1992)は,自伝的記憶を具体的な記憶(specific memory,個人が思い出した出来事の中で時間や場所が特定できる,例えば「昨日の午後公園に行きました」)と概括的な記憶(overgeneral memory)に分け,さらに概括的な記憶をカテゴリー的記憶(categoric memory)と拡張記憶(extended memory)に分類した自殺者やうつ病患者は、問題に基づいて特定の時間内の具体的な事件やエピソードを抽出するのが難しく,大まかな、一般的な記憶を思い出す傾向がある。この現象は自伝的記憶の概括化(Overgenerabizity of Autobiographical Memory:OGM)と呼ばれる(WilliamsとBroadbent,1988)。

本研究では,主に抑うつ傾向がある大学生と抑うつ傾向がない大学生を比較する形で,自伝的記憶想起時の感情状態が,想起する記憶の概括化に及ぼす影響について検討することを目的とする。

これまでの研究では,記憶の概括化はうつ病、不安などの問題と密接に関連していることが明らかになっていたが,臨床に集中することが多く,抑うつ傾向のある人に注目することは少ない。本研究は,異なる情緒状態における抑うつ傾向大学生と無抑うつ傾向大学生の概括化程度の違いを探究する。そして,伝統的な自伝的記憶試験で発生する可能性のある誤差問題を討論する。同時に,概括化の程度を低下させる方法を検討し,概括化の程度低下と抑うつ傾向緩和の関係について検討する。

近年,若者の抑うつ傾向やうつ,また,それによる自殺件数が増加している。抑うつと想起する自伝的記憶の内容について明らかにすることが望まれている。学術的意義として,感情状態が想起する自伝的記憶の内容やその概括化程度に及ぼす影響,さらには,抑うつ傾向と影響の程度について明らかにすることができる点が挙げられる。

社会的意義としては,青年の抑うつ傾向を緩和する方法を提案することができ,その結果,良好な精神衛生状態を推進することがつながることが挙げられる。

「顔」をありのままに見ているのか――顔認知の実験的検討―― Mayu Yamaguchi

 私は「顔認知」を軸に,人が他者や自己の顔をどのように知覚し,印象づけ,記憶しているのかについて研究しています。顔は一般的に共通した構造を持つにもかかわらず,私たちは顔から個人を識別し,感情や印象を読み取り,顔を社会的相互作用において重要な情報源として活用しています。しかし,同じ顔を見ても,その認知の仕方は見る人の特性や状況によって異なります。

 私は,こうした顔認知にみられる個人差や文脈依存性を実験的手法により検証しています。これまでの研究では,第一印象が良い人物は他者に魅力的な顔として認知されること,親は子どもの顔を実際よりも魅力的に認知すること,さらに顔動作の定量的解析から動的表情が印象形成に与える影響などを明らかにしました。

 直近では,顔認知と加齢やメンタルヘルスとの関連にも注目し,応用的研究にも取り組んでいます。今後は,脳神経科学や臨床心理学などの分野と連携し,顔認知のメカニズムとその応用可能性について分野横断的に検討していきます。(https://researchmap.jp/mayu_yamaguchi)

  My research focuses on face recognition, exploring how we perceive, form impressions of, and remember the faces of others and ourselves. Although faces share common structural features, we use them as critical sources of information in social interactions—identifying individuals, reading emotions, and interpreting impressions. Interestingly, how we recognize the same face varies significantly depending on the viewer’s characteristics and contextual factors.

  Through experimental methods, I investigate these individual differences and context- dependent aspects of face recognition. My findings demonstrate that individuals who make a good first impression are more likely to be recognized as attractive by others, and that parents tend to recognize their children’s faces as more attractive than they actually are. Additionally, through quantitative analysis of facial movements, I have revealed that dynamic facial expressions significantly influence perceived attractiveness.

  Recently, I have extended my focus to examine how face recognition relates to aging and mental health, aiming to apply these findings in practical settings. Looking ahead, I plan to collaborate across disciplines—including neuroscience and clinical psychology—to further investigate the mechanisms of face recognition and explore its applications in everyday life.

(https://researchmap.jp/mayu_yamaguchi?lang=en)

修士学生

パーソナリティに対する顕在的及び潜在的態度の差に関する調査 Lyeen Seong

接近・回避は人の態度を表す基本的な行動であり、好ましい刺激に接近し、嫌な刺激から回避するというは本能的な反応である。Chen and Bargh (1999)はレバーを用いて反応速度を計測し、出てくる単語が良ければレバーを引き寄せ(接近)、悪ければレバーを押し退ける(回避)適応グループや、その逆の非適応グループに参加者を分け実験を行なったところ、非適応グループより適応グループの方が、接近回避共に反応速度が有意に速いという結果が示された。良いものに近づく時や悪いものから回避する時に、その逆の行動より反応速度が速くなる効果をコンパティビリティ効果(compatibility effect)という。Rougier et al. (2018)は、Visual Approach/Avoidance by the Self Task、通称VAASTを開発し、コンパティビリティ効果の再現に成功した。VAASTはボタンやモニターを使った接近回避タスクである。接近のボタンを押した時にモニター内の刺激や背景が拡大され、回避のボタンを押した時に刺激や背景が縮小することによって、擬似的に接近回避行動を作り出すことができる。本研究では、パソコンでVAASTを利用することができるOnline-VAAST(Aubé et al., 2019)を用いて、反応速度と態度の関連性を示すコンパティビリティ効果を利用し、パーソナリティに対する潜在的な態度を評価する。それに加え質問紙で顕在的な態度を観測し、顕在・潜在にどのような差が見られ、どちらが参加者の性格と相関が大きいのか調査するのを本研究の目的とする。顕在・潜在間で大きな差が見られる場合、パーソナリティに対してアンコンシャスバイアスが存在すると考えられる。Rougier et al. (2019)はVAASTを使用して、二つの国籍の人名に対して接近回避行動を取る時、内集団バイアスが見られるのか調査したところ、優位集団、劣位集団ともに内集団バイアスが見られた。

人種や国籍といったアンコンシャスバイアスが比較的かかりやすい刺激でなく、パーソナリティでも同様のバイアスが見られるのかという点にフォーカスして調査する。

メッセージの内容と発信者の違いが予防行動とその意欲に与える影響,および記憶との関連 TTT

予防行動の意思決定には,メッセージの発信者や内容が大きく影響を及ぼすことが指摘されている。たとえば,奥原(2020)は,コロナ予防メッセージの発信者によって予防行動意思が変化することを示した。また,Hopfer(2012)は,大学生を対象にしたHPVワクチン接種に関する介入研究において,「仲間(学生)」と「専門家(医師)」の両者を組み合わせたメッセージが最も高い接種率を示した(22% vs. 12%)。この研究は,発信者の属性がメッセージの受容と行動促進に重要であることを示唆している。さらに,奥原(2022)は,病気によって苦しむ対象が「自分」か「家族」かによって,ワクチン接種行動が異なることを報告した。しかし,病気の対象が「自分(個人)」か「国民(集団)」かという言及対象の違いが,予防行動やその意欲にどのような影響を与えるのかは,これまで十分に検討されていない。また,従来の予防啓発研究では,メッセージを「記憶しているかどうか」が行動意欲や行動実践とどう関係するかについて明確に検討されてこなかった。本研究は,予防メッセージの発信者および言及対象の違いが,予防行動意欲とその記憶にどのような影響を与えるのかを明らかにすることを目的とする。また,記憶内容と予防行動意欲の関係を検証することで,記憶の定着が行動に与える影響も明らかにする。

醜い野菜の消費におけるラベル使用の影響 Tyou Bun

準備中

懐かしい匂いの回想前後におけるネガティブ気分軽減効果の検討 Itsuki Obata

大学生を対象に,懐かしい匂いに関する回想が心理的反応にどのような影響を及ぼすかについて,POMS2を用いて気分状態の変化を検討する。


学部4年生の卒業研究テーマ

実名条件下と匿名条件下でのSNS上でのトラブル場面における人間の攻撃性の差異について
Goki Akazawa

幸福感を喚起する歴史的ノスタルジア風景とその普遍性について
Sho Harakon

ミステリー小説における物語構造の違いおよび認知欲求の個人差が物語移入に与える影響について
Chiyuki Kamiguri

競技かるた選手の熟達度合いと記憶に関する研究
Mitsuka Kimura

嗅覚刺激(香り)と聴覚刺激(音楽)の音楽評価への影響について
Natsuki Matsuzaki

VRによる視覚刺激が匂いの移動知覚に与える影響について
Takashi Matsukawa

文字印象と色彩生体効果の関連からみたXRゲームデザイン
Akari Nishioka

自己紹介場面を想定した際の化粧の効果について
Riiko Sato

未来に対する期待と現在の状況の関連とパーソナリティの違いが動機づけに与える影響について
Mei Yamamoto